数多くの作品が存在する機動戦士ガンダムシリーズは、視聴順に迷いやすいアニメ作品の代表格です。特に初めて視聴する方は、どれから見ればよいか迷ってしまうことも多いでしょう。
ガンダムシリーズは大きく分けて「宇宙世紀」と「オルタナティブ(アナザーガンダム)」の2系統に分類されます。宇宙世紀シリーズは共通の年表を軸に作品がつながっており、いわばガンダムの本流とも言える構成です。一方、オルタナティブシリーズは作品ごとに独立した世界観で構成され、どこからでも視聴できる自由度の高さが特徴です。
この記事では、それぞれのシリーズの特徴を押さえつつ、初めての方にも分かりやすいおすすめの視聴順を紹介します。ガンダムの世界をより深く楽しむための手がかりとして、参考にしてください。
1. ガンダムには「宇宙世紀」と「オルタナティブ」のシリーズがある
引用:ABEMA「機動戦士ガンダム (アニメ)」引用日2025/6/4
ガンダムシリーズを視聴する際、まず押さえておきたいのが「宇宙世紀」と「オルタナティブ(アナザーガンダム)」という2つの作品群の違いです。
初代「機動戦士ガンダム」に始まる宇宙世紀シリーズは、一貫した年表に沿って物語が進行します。一方、オルタナティブ作品は世界観がそれぞれ独立しており、作品ごとの特色を楽しむことが可能です。
以下で、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
1-1. 宇宙世紀シリーズ
宇宙世紀(Universal Century)は、1979年に放送された「機動戦士ガンダム」から始まる、ガンダムの中核となる世界観に基づいて作られた作品のことです。宇宙移民が進んだ未来、人類はスペースコロニーに住むようになり、やがて地球連邦政府とジオン公国の対立によって「一年戦争(U.C.0079)」が勃発します。
この宇宙世紀シリーズの特徴は、1つの時間軸に沿って複数の作品が連続して展開されている点にあります。
登場人物や組織の関係性、戦争の経緯が作品ごとに積み重なっていく構造は、ガンダムを「歴史物語」として味わう楽しさを提供しています。
また、「ニュータイプ」や「サイコフレーム」などの設定を通じて、人類の進化や戦争の意味といった哲学的テーマも扱われているのも特徴です。
1-2. オルタナティブ(アナザーガンダム)シリーズ
オルタナティブ作品、通称「アナザーガンダム」とは、宇宙世紀という共通年表に属さず、作品ごとに独立した世界観・設定・年号で展開されるガンダムシリーズを指します。各シリーズは独自の年号・設定・政治体制を持ち、物語も相互には直接つながっていません。ジオン軍・地球連邦軍などの既存組織が登場しない作品も多くあります。
オルタナティブシリーズは時代ごとのトレンドや社会的背景を反映し、ガンダムを新しい視点から描く作品が多いという特徴があります。遺伝子操作、少年兵などの重いテーマや、近年は女性を中核に据えた作品が多いのも、オルタナティブシリーズの特徴です。
2024年のガンダム45周年記念特番を機に、公的に「オルタナティブシリーズ」という名称が用いられるようになる以前は「アナザーガンダム」と呼ばれていました。
2. 【本流を知りたい人向け】宇宙世紀シリーズのおすすめ視聴順
引用:U-NEXT「「ガンダム」歴代TVシリーズがU-NEXTに揃い踏み!『機動戦士Vガンダム』『新機動戦記ガンダムW』など26作品が登場。国内最大級72作品を見放題でラインナップ!」引用日2025/6/4
2025年6月現在放送中の「機動戦士GundamGQuuuuuuX」は宇宙世紀シリーズにあたり、過去作のオマージュも多い作品です。そのため、宇宙世紀の流れをつかみたいと思う方も多いでしょう。
しかし、宇宙世紀シリーズはかなりの本数があり、劇場版作品や外伝的作品も多いため、どれから見ればよいのか悩みがちです。
ガンダムシリーズをこれから見る方が視聴する場合、作品ごとのつながりが分かりやすい時系列順に見るのがおすすめです。中でも、現在までのガンダムと関連深い、押さえておきたい本流とも言える5作品をおすすめ視聴順に紹介します。
2-1. 機動戦士ガンダム
「機動戦士ガンダム」は1979年に放送された、ガンダムシリーズの原点となる作品です。舞台は宇宙世紀0079、宇宙移民の時代に突入した人類が、地球連邦政府とジオン公国との間で激しい戦争を繰り広げています。物語は、少年アムロ・レイが偶然ガンダムに乗り込み、戦争の渦中に巻き込まれるところから始まります。
リアルな戦争描写、深みのあるヒューマンドラマ、そしてニュータイプという概念が話題となり、従来のロボットアニメとは一線を画す作品として評価されました。
リアリズムとSFを融合させた革新性により、多くのフォロワーを生み、以後のガンダムシリーズに多大な影響を与える基礎を築きました。
2-2. 機動戦士Zガンダム
「機動戦士Zガンダム」は、1985年に放送された「機動戦士ガンダム」の正式な続編です。舞台は宇宙世紀0087年、地球連邦政府の腐敗が進む中、強硬派のティターンズがスペースノイド弾圧を強行し、反連邦組織エゥーゴと対立します。物語は、ティターンズに反発した少年カミーユ・ビダンが、偶然手にしたガンダムMk-Ⅱで戦いに巻き込まれるところから始まります。
アムロやシャアらファーストガンダムの登場人物も再登場し、前作の延長線上にある重厚な物語が展開されます。
戦争の陰惨さを描いた作風により、シリーズの中でも高い評価を受けている作品であり、ガンプラブームの火付け役にもなりました。
2-3. 機動戦士ガンダムΖΖ
「機動戦士ガンダムΖΖ」は1986年に放送されたテレビアニメで、「Ζガンダム」の直接的な続編にあたります。舞台は宇宙世紀0088年、グリプス戦役の終結直後、エゥーゴは戦力不足に苦しむ中、ネオ・ジオンとの新たな戦いに直面します。主人公は、サイド1のコロニー・シャングリラに住む少年ジュドー・アーシタです。
物語前半はコミカルな描写が多く、前作とのギャップに戸惑う視聴者も見られましたが、後半は重厚な戦争ドラマとして展開されます。
主人公ジュドーはニュータイプとして成長し、ZZガンダムを駆ってネオ・ジオンと対峙します。子どもたちの奮闘とモビルスーツの描写が光る、意欲的な作品です。
2-4. 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」は、1988年に公開されたシリーズ初の劇場オリジナル作品です。舞台は宇宙世紀0093年、ネオ・ジオンを再興したシャア・アズナブルと、連邦軍ロンド・ベル所属のアムロ・レイによる、長年にわたる因縁の決着が描かれます。
本作は、一年戦争以来の宿命の対立に終止符を打つ重要な一作であり、迫力の戦闘シーンも大きな見どころです。
テーマ性も強く、人類の未来や地球の在り方を問うメッセージが込められており、シリーズの完結編として高い評価を受けています。
2-5. 機動戦士ガンダムUC
「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」は、2010年から2014年にかけて全7話構成で展開されたOVA作品です。舞台は宇宙世紀0096年。「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」から3年後の時代で、宇宙世紀100年の歴史を根底から揺るがす「ラプラスの箱」をめぐる戦いが描かれます。
主人公バナージ・リンクスは、工業コロニーで出会った少女オードリー・バーンをきっかけに、白いモビルスーツ・ユニコーンガンダムのパイロットとなり、地球連邦軍やジオン残党「袖付き」との激戦に身を投じていきます。
福井晴敏さんによる小説を原作とし、映像化された本作は、精緻なメカ描写と壮大な人間ドラマで高い評価を得ました。
OVA作品ながら人気を集め、後に再構成版「RE:0096」として地上波でも放送され、宇宙世紀シリーズの中でも重要な位置を占める作品となりました。
3. 【雰囲気をつかみたい人向け】オルタナティブのおすすめ視聴順
引用:機動戦士ガンダム 水星の魔女 公式サイト「トップページ」引用日2025/6/4
時系列が定まっている宇宙世紀シリーズに対して、オルタナティブシリーズには決まった順番がないため、好きな順番で視聴できる点が魅力です。
以下では、近年公開された作品の中でも、人気の高いものを紹介します。
3-1. 機動戦士ガンダム 彗星の魔女
「機動戦士ガンダム 水星の魔女」は、2022年10月から2023年7月まで放送された、ガンダムシリーズ初の女性主人公によるテレビアニメです。舞台は独自の紀年法A.S.122。宇宙企業が支配する経済圏において、水星出身の少女スレッタ・マーキュリーがアスティカシア高等専門学園に転校することから物語が始まります。
彼女は呪いのモビルスーツと呼ばれる「ガンダム・エアリアル」に搭乗し、数々の決闘と陰謀に巻き込まれていきます。
少女たち・少年たちが通う学園ドラマと、企業間戦争が交錯する構成に加え、ラブコメ要素も盛り込まれ、従来のシリーズとは一線を画す新たな魅力を放ちました。ジェンダーに関する現代的なテーマも扱われ、若年層からコアファンまで幅広い支持を集めた作品です。
3-2. 機動戦士ガンダムSEED(シリーズ)
「機動戦士ガンダムSEED」は、2002年10月から2003年9月にかけて全50話が放送されたテレビアニメで、21世紀初頭のガンダムシリーズを代表する作品です。舞台は遺伝子操作により生まれたコーディネイターと、自然な出生のナチュラルが対立するC.E.(コズミック・イラ)という時代です。中立コロニーに住む少年キラ・ヤマトは、旧友アスラン・ザラと戦場で敵同士として再会し、苦悩と選択の中で成長します。
本作は高いドラマ性と現代的な社会テーマを盛り込んだ構成で、従来のファン層だけでなく若年層や女性層にも広く支持されました。
続編「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」(2004年~2005年)や、20年ぶりの完全新作映画「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」(2024年)も展開され、SEEDシリーズとして長期にわたる人気を誇っています。
さらなる続編として「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ZERO」も制作が決定しており、今後ガンダムシリーズを追う上で押さえておきたい作品です。
3-3. 機動戦士ガンダム00
「機動戦士ガンダム00(ダブルオー)」は、2007年から2009年にかけて放送されたテレビアニメで、全50話(2シーズン構成)から成る作品です。西暦2307年、地球ではエネルギー格差と覇権争いが続き、3大勢力が軌道エレベーターを巡って争いを続けていました。戦況が膠着する中、私設武装組織ソレスタルビーイングが「武力による戦争の根絶」を掲げ、ガンダムを用いて戦争への武力介入を開始します。
ガンダムマイスターと呼ばれる4人の若者たちは、それぞれの過去と信念を抱えながら、世界の矛盾に立ち向かっていきます。
ガンダムシリーズではこれまで使われなかった「西暦」が作中に使用されているほか、現代社会を彷彿とさせるエネルギー問題や民族紛争などを主題としている点が特徴です。現代社会と地続きにもなっている部分もある、高いメッセージ性と緊張感のある展開で人気の高い作品です。
2010年には劇場版として「A wakening of the Trailblazer」が公開され、シリーズの完結編として大きな話題を呼びました。
まとめ
ガンダムシリーズを視聴する際には、宇宙世紀とオルタナティブという2つの系統を理解することが重要です。宇宙世紀シリーズは一貫した年表とキャラクターの成長が魅力であり、時系列順に視聴することで物語の奥行きを堪能できます。とくに「機動戦士ガンダム」から「UC」までの一連の流れは、シリーズの本質を知る上で欠かせません。
一方のオルタナティブシリーズは、独立した世界観とテーマ性の多様さが魅力です。作品ごとに異なる社会問題や人間ドラマが描かれており、視聴者の関心や好みに応じて選ぶことが可能です。近年の作品では、「水星の魔女」や「SEED FREEDOM」など、新しい切り口から描かれた作品も高く評価されています。
自分に合った入り口からガンダムの世界に触れることで、より深い理解と楽しみ方が広がるでしょう。
※当記事は2025年6月時点の情報をもとに作成しています