マンガ「チ。―地球の運動について―」は、これまで販売されてきた漫画にはおそらくなかった、地動説に焦点を絞って物語が展開される作品です。コペルニクスが太陽の周りを地球が自転と公転をしていることを主張し、ガリレオが地動説を証明しました。しかし、それよりも前、天動説が当たり前とされてきた時代に、多くの人物が「地球が動いているのでは?」という気付きに翻弄されてきました。
当記事では、「チ。―地球の運動について―」のあらすじや最終巻の謎の考察について解説します。
1.「チ。―地球の運動について―」とは?
『チ。ー地球の運動についてー』
— 魚豊 「チ。地球の運動について」「ようこそ!FACTへ」「ひゃくえむ」 (@uotouoto) November 24, 2020
第1巻の表紙はこんな感じになってます!
12月11日発売です!
よろしくお願いします
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「チ。―地球の運動について―」は、漫画家の魚豊(うおと)さんによって描かれた、地動説を命懸けで研究する人間の生き様と信念を描いた作品です。2020年に連載を開始し、2022年6月に発売された8巻で完結しています。
「命をかけられるものがある人生は幸せ」をテーマに作品を作り出したという魚豊さん。立場や時代を超えて決死の思いで地動説を証明しようとする主人公たちの姿を見ると「命を捨てても曲げられない信念」「世界を敵に回しても貫きたい美学」を感じます。
累計発行部数は350万部を突破し、2021年にはマンガ大賞第2位、2022年には手塚治虫文化マンガ大賞にも選ばれた話題作です。
1-1.「チ。―地球の運動について―」のあらすじ
物語の舞台は十五世紀のヨーロッパの「P国」です。「C教」という宗教が主流の世の中で、天動説が真理とされていました。C教の思想に反する異端思想を主張する人間は批判され、火あぶりや拷問、処刑をされ迫害を受けていました。
物語の主人公の1人であるラファウは孤児として生まれ、ポトツキという神父の養子となり、聡明で博識な少年として高い評価を得て、12歳で大学への進学を許されました。合理性を追求し順風満帆な人生に「チョロい」と感じていたラファウでしたが、あるときラファウは当時異端とされていた地動説を唱えるフベルトに出会います。
地動説は太陽を中心として地球を含む惑星が太陽の周りを回転しているというもので、地球中心で考える天動説とは真逆の考えでした。天体観測を趣味としていたラファウは、最初は殺すと脅され半ば無理やりフベルトの助手にされます。地動説の合理性や美しさに魅力を感じたラファウは地動説の研究にのめり込んでいきますが、ラファウが情報を集め研究していることに気付かれ、マークされます。
時を超えて地動説を信じる多くの人たちが世の中と戦いながら行動し、真理を追求することに挑戦していく物語です。
2.「チ。―地球の運動について―」の最終巻に隠された謎を考察
【ご報告】
— 魚豊 「チ。地球の運動について」「ようこそ!FACTへ」「ひゃくえむ」 (@uotouoto) April 24, 2020
週刊スピリッツさんで新作連載させて頂きます。
(時期はとりあえずまだ未定です)
タイトルは『チ。』です
乞うご期待! pic.twitter.com/Z1blNb7F2A
「チ。―地球の運動について―」は全8巻で完結しています。最終話は衝撃の展開で、読者に大きな驚きと混乱を与えました。
ここでは最終話に隠された謎について、考察をします。完結までの内容を含むので、まだ最後まで読んでいない方はネタバレ注意です。
2-1.最終巻8巻の表紙が黒いデザインの意味
『チ。ー地球の運動についてー』
— 魚豊 「チ。地球の運動について」「ようこそ!FACTへ」「ひゃくえむ」 (@uotouoto) June 24, 2022
最終8巻、表紙はこんな感じです。
6月30日発売です。
来週です。是非!
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「チ。―地球の運動について―」の表紙は白い背景に人物が描かれているシンプルな表紙が基本です。しかし、最終巻の表紙には人物は描かれておらず、真っ黒なデザインが印象的です。なぜ最終巻だけ他と全く異なる表紙デザインにしたのかには、2つの考察があります。
まず、黒い表紙をよく見ると星空が描かれています。1~7巻でキャラクターたちは天を見上げており、その視線の先を描いたため、黒い表紙になったと考えられます。
また、2つ目の考察は最終巻ではパラレルワールドやifの世界を描いている、ということです。世界が異なるため、その差を表すためにこれまでとは異なる黒い表紙にしたと言えます。
7巻までの舞台は「P国」と表現されていましたが、8巻では「ポーランド王国」と明記されていることからも、これまでとは異なる世界を示していることが感じられます。
2-2.最終巻で再登場するラファウの存在
読者が混乱した最大の要因として挙げられるのは、自死したはずのラファウが登場していたことです。ラファウは1巻で死亡します。ところが、最終巻で青年ラファウが先生として再び描かれています。
1巻登場時の12歳の少年としてではなく青年として、先生として再登場しており、このことから「実は生き延びていたのではないか?」という考察が生まれました。しかしラファウは自死の後、最終的にノヴァクによって火にかけられたため、実は生きていたという可能性は著しく低いと考えられます。
また、同名の別人であるという考察もあります。物語の1部で登場するラファウと最終巻で登場するラファウは、1部から3部の間に35年の年月が流れていることを考えると、初登場時は12歳だったため47歳で、年齢と見た目が一致しません。知的好奇心から人を殺めている描写もあり、性格が異なることも別人と言える理由の1つです。別人というところから、最終回の世界はパラレルワールド、またはifの世界だという意見もあります。
2-3.7巻表紙を飾り8巻で登場したアルベルトの存在
7巻の表紙を飾ったのはアルベルトという人物です。アルベルトは7巻では全く登場せず読者を混乱させましたが、最終巻の8巻でメインキャラクターとして登場しました。
アルベルトは1400年代のポーランドに実在した歴史上の人物で、フルネームはアルベルト・ブルゼフスキです。天文学や数学を教える大学教授で、文学に詳しく学生たちを魅了していましたが、プールバッハの理論を含む天動説一般に対して懐疑的でした。
作中では描かれていませんが、史上ではアルベルトの生徒の中にはニコラウス・コペルニクスもいました。コペルニクスは後に地動説を発表します。アルベルトはコペルニクスの師匠に当たる重要人物です。
実在した人物の登場により、7巻までの完全なフィクションの世界と8巻のもう1つの実在したかもしれない世界、ifの世界の違いが表現されています。
2-4.告解室にいた司祭の正体
アルベルトが告解室に入り懺悔した際、司祭が自分の過去を語るシーンがあり、司祭は「昔、友人の命を見捨てた」「彼は取り返しのつかないことをした」と語ります。このことから司祭は少女のヨレンタを逃したC教の新人異端審問官の同期と考察されます。
異端児であったバデーニとオクジーと仲良くしていたヨレンタは、異端の疑いをかけられ拷問されました。しかし、ある新人異端審問官がヨレンタを逃がしました。その異端審問官はヨレンタの代わりに処刑されてしまいます。
3.「チ。―地球の運動について―」に込めた作者の想い
今週の巻頭カラー元絵です pic.twitter.com/L219FiMxsi
— 魚豊 「チ。地球の運動について」「ようこそ!FACTへ」「ひゃくえむ」 (@uotouoto) February 1, 2021
「チ。」には、「知性と暴力の関係性」「命をかけられるものがある人生は幸せだ」というテーマが込められています。
「チ。」というタイトルは、「知(知識)」「地(地動説)」「血(暴力)」の3つの意味が込められているトリプルミーニングになっているのが特徴です。「チ。」の「。」部分は「地球は動くのか、動かないのか」ということを表しています。
知りたいと思う好奇心や自分自身の本音に向き合い、魂や愛を注ぐことこそが幸せな人生であると作者の魚豊さんは語りました。地動説を追求するほどに主人公たちは追い詰められていきますが、それでも真理に近づくことを止められない者たちという、好奇心の持つ暴力性や加害性も見事に表現されています。
4.アニメ化!「チ。―地球の運動について―」のキャラクターと声優を紹介
「チ。―地球の運動について―」は2024年10月5日(土)よりNHK総合テレビにてアニメ化されることが決定しました。以下では、アニメで放送される主要な登場人物たちと声優について紹介します。
キャラクター | 担当声優 | キャラクターの紹介 |
---|---|---|
ラファウ | 坂本真綾 | 孤児として生まれるも、12歳で大学に飛び級する天才少年。「合理的なものは美しい」と考え、常に合理的な判断で生きてきましたが、地動説に強く惹かれ研究を始めます。六等星まで見えるほどの視力を持っています。 |
ノヴァク | 津田健次郎 | 元傭兵の異端審問官。思想は持っていませんが、娘をはじめとしたこの世界の平穏を守るため、仕事と割りきって拷問を行います。家族へ自分の仕事内容は伝えていません。 |
フベルト | 速水奨 | 「禁じられた研究」である異端思想の研究を行う天文学者で、ポトツキの知人です。ラファウに地動説を伝えた人物で、ラファウに大きな影響を与えます。 |
オクジー | 小西克幸 | 代闘士。長髪で大柄、優れた視力を持っていますが、星を見ることを恐れています。超ネガティブ思考な性格で、現世には期待をせず早く天国に行きたいと考えています。 |
バデーニ | 中村悠一 | 修道士。「人生を特別にする瞬間」を追い求め、教会の規律に従うことなく「知」を追い求めた結果、田舎村へ左遷されました。右目は焼かれ、眼帯をしているのが特徴。知識人で、高い計算力など並外れた頭脳を持ちます。 |
ヨレンタ | 仁見紗綾 | 天文研究助手。宇宙論の大家の家に入れましたが、「女だから」という理由で満足に研究に参加させてもらえず、絶望します。バデーニが出題した問題を解くなど、聡明で優秀な頭脳を持ちます。 |
まとめ
「チ。―地球の運動について―」とは、2020年に連載が始まってからマンガ大賞第2位、手塚治虫文化マンガ大賞を受賞した話題作です。天動説が心理とされていた時代に、人生をかけて地動説を研究し続けた人間たちの生き様と信念が描かれています。天動説、地動説に関して詳しく分からないという方でも、物語を通じて少しずつ理解していけるため心配はいりません。
今回は最終巻の謎に関する考察を紹介しました。考察を理解したうえで再度漫画を読み返し、自分なりの答えを見つけてみてくださいね。
※当記事は2024年10月時点の情報をもとに作成しています