七月大歌舞伎

七月大歌舞伎とは、月ごとに年間を通して興行される歌舞伎の7月の公演のことだ。江戸時代の歌舞伎公演は夏季には休みがあった。5月末に千秋楽を迎えて、再会するのは秋になってからで、11月の「顔見世」興行で幕を開けたのである。この言葉には、歌舞伎役者の雇用契約が11月から1年間であったため、新しいメンバーを紹介する意味が含まれている。プログラムとしては、次の月に興行される八月納涼大歌舞伎の3部構成ではなく、昼の部と夜の部の2部という通常の編成になっている。例えば、2017年の東京・歌舞伎座での七月大歌舞伎の演目は次のようなものだった。昼の部は、荒事ならではの豪快さで歌舞伎十八番のなかでも人気の高い「歌舞伎十八番の内 矢の根（ヤノネ）」から開幕した。つぎは、江戸世話物の名作である「盲長屋梅加賀鳶 加賀鳶（カガトビ）」が続き、獅子の親子による伝統舞踊「連獅子（レンジシ）」で締められた。夕刻から始まる夜の部は、三幕構成の「通し狂言 駄右衛門花御所異聞（ダエモンハナノゴショイブン）」であった。これは、江戸後期に七世市川團十郎も演じていたと言われる由緒ある演目だ。この公演では、市川海老蔵が日本駄右衛門、玉島幸兵衛、秋葉大権現の3役を早替りで務めている。また、海老蔵とその息子である堀越勸玄が2人での宙乗りを披露して話題となった。